杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

合格発表までの過ごし方

 みなさんは、司法試験の受験から合格発表までの期間がどのくらいあるかご存じでしょうか。答えは約4ヶ月です。一般の方の感覚からしたら長い方かと思われます。先日、司法試験の合格発表待ちの受験生と飲む機会があり、私自身は果たしてどうだったか振り返ることがありましたので、そんな流れから今回のコラムのお題としてみました。
 現行制度では、司法試験は毎年5月中旬に択一(マークシート式のもの)+論文式の試験が一度に行われます。6月に択一の合格発表があり、これに合格した人のみが論文の採点対象となります。最終的な合格発表は9月上旬です。試験から最終発表まで約4ヶ月もの期間があり、合格を待つ身としては、随分長い間、落ち着かない思いをするものです。
 合格発表までの過ごし方は人それぞれです。合格(ちなみに、合格した場合はその約2ヶ月後から司法修習が始まります)・不合格のいずれに転んでも良いような勉強をひたすら続ける・・・のが受験生としての理想なのかもしれません。しかし、なかなかそうもいかないのが正直なところでしょう。人生最後の夏休み(?)と割り切って、海外含めあちこち旅行に行く、ひたすら飲み倒す、地元で羽を伸ばす、何もせずボーッと過ごす、などといった方々が割と多いような気がします。
 かくいう私はというと、例に漏れずあちこち旅行に行っておりました。最も長期間だったのは、関西~九州を中心とした「行ったことのない県に行こうツアー」でした。従前より、全国あちこち旅行はしていたのですが、折角の機会なので、これまで行きそびれていた県を訪れた上で、全県制覇してしまおうという趣旨のものだったのです。具体的には、三重、和歌山、大分、熊本、宮崎及び鹿児島に行ったことがなかったので、1週間くらいかけてこれらの地域を一挙に訪れました。九州への交通手段は大阪~大分のフェリーでしたが、瀬戸内海を経由しての旅行は初めてだったので、大変ワクワクしたものです。また、熊本では熊本城を訪れ、熊本ラーメンや馬刺しを食しました。この度の震災には同じ被災地の者として、大変心を痛めております。
 弁護士の仕事をして強く感じることがあります。それは、法律の知識もさることながら、それ以外のあらゆる周辺的な知識も仕事に役立つということです。私の場合は、旅行で見聞きなどした知識が間接的に仕事に役立つことが多いと感じております。遠方出身の方と仕事でお話しする場合の話のネタにもなります。そのようなことを考えると、合格発表までの間は勉強するのも勿論大事ですが、勉強とのメリハリをつけつつも、受験時代にはできなかったことをとことんやって、自分の糧とするのがより有益なのかもしれません。
 このコラムを執筆した時点では、合格発表まで残り1ヶ月強です。発表が気になって何かと手につかなくなるところかもしれませんが、残りの時間をできるだけ有効に使って、合格発表を向かえていただければと思います。
(弁護士 赤石圭裕)

マイナンバー

 先日、当事務所でも遅ればせながら、事務所内部のマイナンバー(個人番号)の取扱規程を整備しました。マイナンバー制度は、国民一人ひとりに付与される12桁の番号であり、平成28年1月から本格的な運用が始まりました。みなさんのお手元には既にマイナンバー通知カードが届いており、中には写真付の個人番号カードを取得された方もいるかもしれません。また、既に勤務先などからマイナンバーの提供を求められているかもしれません。
 税理士や社会保険労務士とは比べものになりませんが、法律事務所としてもさまざまな場面で皆さんのマイナンバーを取り扱う機会が少なからず出てきます。
 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」という名称のとおり、現在のマイナンバー制度は、税や社会保障の分野でのヒモ付けに留まっています。しかし、政府のロードマップによれば、近い将来には、企業の社員証やキャッシュカード・クレジットカードとしての利用、インターネット上の認証手段など民間分野での利用や診療情報とのヒモ付けなども想定されているそうです。また、平成30年からは預貯金口座をはじめとした個々人の金融資産とのヒモ付けが予定されています(任意とされていますが、運用次第で事実上「義務化」される可能性もあります)。これにより国民の国内財産・お金の動きが正確に把握され、課税が強化されるとも言われています。資産家の間ではマイナンバーが付与される前に国外に移転する等の対策も喧伝されていました。
 個人的にはたいした資産はありませんし、やましいところもないので、公平・適正な課税という点では何ら問題はありませんし、望ましいとも思います。また、利便性が若干向上する面もあるかもしれません。しかし、怖いのはこのように多様な個人情報に結び付きうるマイナンバーが外部に流出・漏洩するリスクです。社会生活をする以上、マイナンバーを第三者に提供しなければならない場面が定期的に生じることは避けられず、かつ、必ずしも提供を受けたその第三者において適正な管理がなされているとの保証はどこにもないのです。現に、平成28年5月の段階で、全国で既に83件の漏洩が報告されているとのことです。
 マイナンバーを取り扱う事業者は、その漏洩、滅失又は毀損の防止その他適切な管理のため必要な措置をしなければならず(法12条)、罰則も定められています。今回規程を整備するにあたって、調べれば調べるほど、マイナンバーについては細心の注意を払う必要があるのだなと認識させられました。
 ちなみに、当事務所では私がマイナンバーの「事務取扱担当者」ですので、当事務所にマイナンバーを提供するにあたって疑問等があれば、お気兼ねなくご連絡下さい。
(弁護士 三橋要一郎)