杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

なごり雪

 この冬は格別に寒さが厳しく、雪も多い日々が続きましたが、さすがに3月の声が聞こえてくるに連れて、寒さの質が和らいでくるのが解ります。お昼もコートを着ないで食事に出て、帰りに公園の木々の芽のふくらみを見て春の近いことを実感したりします。夕方の5時を過ぎても暗くならないのもうれしいものです。

 でも仙台の3月は結構雪が降るのです。しめった雪ですので直ぐに解けてしまい、道汚しになるだけの雪なのですが…。この3月の雪を見ると、昔流行った「なごり雪」という歌を思い出します。伊勢正三作詞作曲で自分でも歌っているのですが、イルカの歌としての方が有名かもしれません。「汽車を待つ君の横で、僕は時計を気にしてる。季節はずれの雪が降ってる。」という出だしの名曲です。

 3年ほど前に、この歌をモチーフにして大林宣彦監督が「なごり雪」という同名の映画を製作し、上映されている小さな映画館に一人で観に行きました。大林監督らしい青春の切なさとほろ苦さが画面や音楽にあふれている佳品でした。映画の舞台が昔訪れたことのある大分県の臼杵だったことも懐かしく思われました。

 そういうわけで、いつも3月の雪を見ると、自然となごり雪のフレーズを口ずさんでしまい、誰かに聞かれたのではないかと思って、そっと辺りを見回してしまいます。

 (弁護士 佐藤裕一)