杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

あじさい寺を訪ねて

 週末を利用して鎌倉を散策してきました。昨年のNHK大河ドラマも「義経」でしたし、いつも定期購読している雑誌サライでも近刊で鎌倉が特集されており、あじさいの季節に思い切って訪ねてみたのです。

 前日までの雨が嘘のような好天に恵まれました。いくつものお寺を中心にしてめぐりましたが、鎌倉は京都や奈良とも違って、こぢんまりした落ち着きのある、そして海岸のある街でした。あじさい寺として有名な明月院のあじさいはやはり噂に違わぬ見事なものでした。青を基調としたあじさいが境内の至る所に植えられていて、前日の雨が玉のようになって花びらに残り、青の色を一層引き立てていました。日本の古来種と言われている、がくあじさいの清楚な姿も素敵でした。長谷寺や成就院では青だけではなく、白、紫、そして赤紫といった色とりどりのあじさいを見ることができました。なかでも、成就院のあじさいに埋め尽くされた参道を登って、振り返ってみるとそこに鎌倉の明るい海が広がっている様は実に感動的でした。

 縁切り寺として知られている東慶寺にも行ってみました。あじさいは勿論、珍しい岩煙草の群生が心に残りました。星形の小さな紫色の花が岩壁一面に広がっているのです。この可憐な花も昔は縁切り寺で女性の悲哀を見続けて来たのでしょうか。東慶寺には東北大学の法学部で「中善さん」として学生に親しまれていた、家族法の大家だった中川善之助名誉教授のお墓があると聞いており、是非お参りしたかったのですが、残念ながら探し当てることができませんでした。めぐったお寺では花菖蒲や夏椿や萩まで見ることができ、鎌倉はまさに様々な季節の花に包まれていました。

 鎌倉には腰越という漁港があり、新鮮な海の幸が味わえると聞いていました。江ノ電の駅にほど近い食堂で食べたしらす(いわしの稚魚)料理とあじフライがとても美味でした。この腰越には満福寺というお寺があり、手柄を立てながら兄頼朝の不興をかった源義経が頼朝の誤解を解くために、ひたすら許しを請う内容の「腰越状」を書いた地としても有名なのだそうです。

  (弁護士 佐藤裕一)