杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

付帯私訴

 最近の新聞報道によると、法務大臣は法制審議会に対し、今年10月にも付帯私訴制度創設を諮問し、早ければ同制度を盛り込んだ刑事訴訟法の改正案を来年1月招集の通常国会に提出されると伝えている。

 付帯私訴とは一口に言えば、「刑事訴訟の際に損害賠償に関する審理も同時に行う制度」である。即ち刑事裁判で被害者が被った損害賠償に関する憲法を同時に進め、有罪の場合は同じ裁判官が賠償命令も出す制度である。ヨーロッパでは広く採用されていると言われており、我が国の旧刑事訴訟法でも採用されていたが、訴訟が複数になることから、戦後の刑事訴訟法改正で廃止され、法体系では犯罪を裁く刑事裁判と私人間の争いを判断する民事裁判とは厳格に区別されている。

 しかし、犯罪被害者の救済策として、早期の損害回復を得られる付帯私訴の導入が具体的に検討されることになったものである。

 その意味では好ましいことであるが、問題点も多い。一番の問題は付帯私訴を認める犯罪の範囲であり(詐欺、横領など経済的被害を受けた事件も含めるかどうか)、複雑な経済事件など賠償額の算定が簡単でない事件は最初から民事訴訟を起こした方が早いと言う意見もある。

 何れにしても法制審での検討が注目される。

 (弁護士 阿部 長)