杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

緑色の研究

 季節は薫風から緑陰へ。

 風薫る5月といいますから、何となく薫風は5月のものと思っていましたが、辞書を見ると、初夏に吹く暖かい南風とありますから6月でもいいのかも知れません。緑陰は、最近あまり使われない言葉ですが、暑い日ざしを避けて本を読んだり、ハンモックをつるして午睡する木陰のことですから、これは、文句なく初夏の風物詩です。

 事務所まえの青葉通のケヤキも若葉が美しく、目にしみるようです。さらに東北大の方に下って行って見上げると青葉山の緑が圧倒的に迫ってきて、さすが杜の都と実感します。
     
      あらたうと青葉若葉の日の光    芭蕉

 芭蕉が日光東照宮に参拝したのは、太陽暦では5月19日に当たるそうですが、青葉山を見上げると、日の光より青葉若葉が尊く感じられます。

 地下鉄の駅では「緑のそよ風いい日だな」という曲を流しています。戦前の唱歌では「鮮やかな緑よ 明るい緑よ・・・薫る薫る若葉が薫る」という唄が思い出深い。もっと古いところでは、「青葉繁れる桜井の・・」と歌い出す「桜井の別れ」がありますね。井上ひさしの「青葉繁れる」という小説の題は、多分ここからとったものでしょう。楠 正成が我が子正行に別れを告げるため馬を止めたのは、桜井の里のあたりの木の下闇でした。「木の下闇」は「緑陰」よりもっと使われなくて死語に近いのですが、私の好きな言葉のひとつです。
さてこの短文をどう締めくくろうかと考えていた矢先、緑資源機構の天下り、官製談合のニュースが入ってきました。みどりは、新鮮、清潔、安全などのイメージがあり、近年は環境保護のシンボル・ワードになっていることは、いうまでもありません。緑資源機構は、林道の開設、改良、森林の造成、農地の整備などの事業を行う独立行政法人のようですが、みどりの名を汚さないような事業運営をやって欲しいものです。

 (弁護士 阿部純二)