杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

7月4日と7月14日の間

 過ぐる7月は、本当に多事な月でした。松本 竜大臣の暴言と辞職、玄海原発再開直前でのストレステストの導入や菅 首相の「脱原発宣言」、梅雨を押しのけて猛暑が続いたこと、そして極めつけは18日の女子ワールドカップでのなでしこジャパンの優勝でした。これは日本中を沸かせ、復興にも元気を与えてくれる快挙でした。しかし今日は少し悠長な話題になるかもしれませんが、外国に目を転じてみましょう。

 7月4日は、いうまでもなく、アメリカの独立記念日。1776年東部13州が独立宣言を公布したのを記念して、7月4日が独立記念日と定められたとのことです。しかし7月4日というのは本国やアメリカ人の間では盛大に祝われるのでしょうが、(次の7月14日に比べると)日本人には今一つなじみが薄いですね。

 すぐ思いだすのは、トム・クルーズの「7月4日に生まれて」ぐらいでしょうか。国の誕生日と同じ日に祝福されて生まれた主人公が、やがてベトナム戦争の苦渋と退廃に巻き込まれる話でした(トム・ハンクスの「フォレスト・ガンプ」にも一部そうした描写があり、この2本はごっちゃになっていけません)。

 一方、 7月14日はフランスの革命記念日です。1789年、パリの民衆がバステイーユ要塞を襲撃したことから革命の火蓋が切って落されました。これを記念する日ですが、本国では単に「7月14日」(ル・カトルズ・ジュイエ)と呼ばれるそうです。ところが、昭和初期ルネ・クレール監督の映画「7月14日」が輸入されたとき、宣伝部が知恵を出して「巴里祭」という題名にした。それ以来日本ではパリ祭という名前が定着したとされています。

 フランス革命については、もちろん沢山の研究書、学術書があるわけですが、一般向けの本で最近面白かったのは、池上 彰、佐藤 賢一共著の「日本の2分の1革命」(集英社新書)です。池上さんはあの池上さんで、佐藤さんは「小説フランス革命」を6巻まで出した作家です。佐藤さんの説によると、フランス革命には二段階があって、前段階(1789年以降)は自然発生的、妥協的な運動に止まったが、人類の宝ともいうべき「人権宣言」を採択している。後段階(1792年以降)になると、運動はガラリと性格を変え、計画的、原理的となり、王の処刑、王政の廃止、共和政への移行と突き進む。これに対して我が国の明治維新は第1段階で終わっているので、2分の1革命である。明治維新だけではなく、第2次大戦後の8月15日革命も2009年の政権交替革命(革命と呼べるならば)もすべて2分の1革命で終わっている、というのです。

 もちろん著者たちは「フランス革命に学ぶべきだ」とか「だから日本は遅れている」と言いたいわけではないでしょう。あくまで日本という国の「変わり方」にはこうした歴史的な性格がある、と言っているのだと思います。

未曾有の大震災から7月11日で4カ月となりました。すみやかな復旧、復興を衷心からお祈り申し上げます。

(弁護士 阿部 純二)