杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

登記

先日、機会があって不動産登記の申請をしました。

登記事務に関しては司法書士の方に依頼して行うのが通常ですが、今回はそうではなく自ら申請をしてみました。

弁護士は司法書士等の業務も行うことができる、という不確かな知識はあったのですが、恥ずかしながらその根拠を知りませんでした。

そこで調べてみると、まず司法書士法73条1項には「・・・司法書士・・・でないものは第3条第1項第1号(登記手続の代理)・・・に規定する業務を行ってはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」と規定されています。

そして、弁護士法3条2項には「弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。」と規定されていますが、「司法書士の事務」とは書いていません。

登記代理権はないのか?と思いましたが、よく読むと弁護士法3条1項に根拠がありました。そこでは「弁護士は、当事者その他の関係人の依頼・・・によって、訴訟事件・・・に関する行為その他一般の法律事務を行うことをその職務とする。」とされており、そこに登記申請代理業務が含まれると解されているそうです。

さらにこの点については裁判例があり、浦和地方裁判所平成6年5月13日判決では、弁護士法3条1項の「その他一般の法律事務」には登記申請代理業務が含まれると解すべきであり、弁護士法が司法書士法73条1項但書の「他の法律」にあたると明確に判示しています。

このほか、弁護士法3条1項を根拠に、行政書士、海事代理士の業務を行うことができます。

今回は単純な所有権移転登記だったので、本を読みつつ知り合いの司法書士の方に教えて頂いて滞りなく申請できましたが、これが例えば少し法律関係が複雑な事案だったらと思うと、やはり餅は餅屋かなと感じてしまいました。

(弁護士 伊藤 敬文)