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杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

レーシック手術を受けて…医療における説明と同意

弁護士 三橋 要一郎

 先日、東京にある大手の某クリニックで、「レーシック」という両目の近視矯正手術を受けました。レーシックとは、角膜表面をスライスし、表出した角膜にレーザー照射をしてその一部を削ることで近視や乱視を矯正する手術だそうです。レーシック自体は安全な手術だと言われていますが、以前にはある大手医院で集団感染が生じて刑事事件にも発展しましたし、実用化してまだ20年位の手術なので長期的な安全性については実証されていないとも言われます。また、レーザーで角膜を削るという侵襲を伴う手術であるため、術後は一時的に少なからず合併症も生じるそうです。

 これまで、腕を折ったり、足を折ったり、歯を折ったりと何かとケガすることは多々ありましたが、少なからずリスクのある「手術」となると初めての体験です。術前には、手術内容や合併症についての説明のDVDを見せられ、何ページにも渡る同意書を渡されました。レーシックは本来は緊急の必要性のない手術であり、保険適用のない自由診療でもあるので、特に説明をより丁寧に尽くしているという面もあるのでしょう。

 私も弁護士として医事紛争に携わることもありますが、とかく自分自身が手術を受ける立場となると、やはり法律家としての思考よりも一患者としての思考が先に立ってしまいます。リスクの説明は受けても、根拠もなく自分は大丈夫だろうと考え、同意書も詳しくは読まずにサインをしてしまいました(単に楽天的で思慮に欠けるだけかもしれませんが)。

 手術はあっという間に終わりましたが、術後半日位は合併症で眼がシバシバしてまともに開けていられませんでした。その間は一時的に悲観的にもなり手術を受けるんじゃなかったとも思いましたが、翌日になるとシバシバも消え、視力は両目とも0.1から1.5程度まで無事回復していました。

 先日、当事務所の佐藤弁護士、伊藤弁護士とともに裁判所・医療機関・弁護士会による医療訴訟に関する懇談会に出席してきましたが、今年度はちょうど医療における説明と同意がテーマとなっていました。医療機関側からは、近年では、(特に大規模な医療機関においては)今回のようにDVDを使う等して患者への事前の説明を工夫して行っているが、他方でリスクヘッジのために同意書面を数多く取らざるを得ないという実情が報告されました。議論においては、日本においては、患者も詳細な説明を受けて自ら選択するというよりも、主治医に任せたいという傾向が強く、欧米の法理論がそのまま当てはまらないのではないかとの指摘もなされていました。また、医師不足が深刻な環境のもとで、説明と同意を過剰に求めることにより医療行為そのものに向けられるべき時間・労力が削られては元も子もなく、どう折り合いをつけていくかという問題だとの指摘もなされていました。

 リスクが大きくはなく自由診療でもあるレーシックと保険診療、特にそれも生死に関わるような手術等とでは単純に比較することはできないのでしょうが、医事紛争に関わる弁護士の1人として、実際に当事者としての医療の現場を体験することも貴重なことなのだと実感しました。

(弁護士 三橋要一郎)