杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

ネットのおそろしさ

 仕事上も私生活上もインターネットを使う機会は大変多くあります。仕事上では依頼者や顧問先の皆さまとメールを通じてやりとりを行うことも多いですし、現在では判例や法律雑誌もインターネットを通じて検索・閲覧します。最近は、弁護士の商売道具である「六法」すら、電子書籍として持ち歩いて利用しています。私生活でもインターネットで国内海外問わずインターネットを通じて物の購入やさまざまな予約等をする機会は大変多いですし、最新のニュースを得るのも今ではテレビや新聞ではなくインターネットです。現代社会は、インターネットがなければ仕事にならないし、私生活も極めて不便になってしまう、インターネットの便利さに依存した暮らしだと言えます。

 他方で、近年、インターネット上の個人情報漏洩やホームページ改ざん、パソコンウィルスの感染等、ネットに関連・起因した様々な被害が報道などで伝えられています。ただ、私自身、妖しいサイトなどにもアクセスしてないし(笑)、ネットリテラシー(ネットを正しく利用することができる能力)については他の人よりもあるだろうと高を括り、自分がこれらの被害に遭うことはないと楽観的に考えていました。

 しかし、その日は突如やってきました。私が私用で使っていた某G社のメールアドレスが外国から不正アクセスを受け、知らない間にアカウントが乗っ取られ、アドレス帳に残っていた連絡先に迷惑メールが一斉送信されてしまったのです。私自身は、そのメールを受信した方々から連絡を頂いて初めて気付きました。メールの宛先はここ10年近く連絡を取っていない方、一度しか連絡をとったことしかない方を含めて200件近く。正直なところ非常に焦りました。乗っ取られたのは仕事中だったのですが、その日は対応に追われ仕事になりませんでした。。。

 フリーメールである某G社では個別の対応はしてくれないので、自分で情報収集して対処するしかありません。インターネットで情報を収集した結果、フィリピンから不正アクセスを受けていたことが判明しました。おそらく、海外のサイトを通じてパスワードが流出したか、桁数のそれ程多くないパスワードだったので自動解析で当てられたものと思われます。また、近ごろ、同じような乗っ取りが某G社を含め多くの会社で頻発しているらしいことも分かりました。

 まず第一に、仕事用のメールアドレスの乗っ取りでなかったことが不幸中の幸いでした。また、すぐに気付いてパスワードを変えたことにより勝手に送信されたメールは1通のみで食い止めることができ、そのメールにもウィルス等はついておらず、記載されたURLは単なる健康食品のサイトであったため恥ずかしい思いもせずに済みました(笑)。それ以降も不正アクセスはなくなりました。

 インターネットを利用していると、同じIDやパスワードを複数のサイトで利用している方も多いかもしれません。今回、私もメールと同じパスワードを利用しているものも一部あったのですが、これらについては幸い不正アクセスされた形跡はなく、念のためパスワードは全て変更することになりました。サイトごとに、パスワードを変えるべきだという話もよく聞きます。それが安全だということは頭では分かるのですが、自分で覚えきれる自信がなく、どこまで徹底すればよいか難しいところです。

 いずれにしても、真夏に思いもかけず冷や汗をかかせられ、教訓をえた出来事でした。インターネットなしの生活には戻れない以上、そして攻撃する側の技術もどんどん革新していく以上、一般の利用者としてもインターネットの安全性確保には注意を払い続けなければいけないのだと痛感させられました。最後に、メールを送信してしまったみなさん、大変ご迷惑をおかけしました。

(弁護士 三橋要一郎)