杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

「まさか」の「さか」再び? ~東北薬科大に医学部が~

 さる2月3日の某紙に「東北薬科大‘四面楚歌’」との見出しで、同薬科大に医学部を設置するために設けられた運営協議会が当初から紛糾し、「生みの苦しみ」に直面していることを伝えていた。
 もともと、同協議会の設置は、文部科学省が本年3月末とされる医学部設置申請までに許可条件として考慮すべきとした7項目の最初に挙げられていたものである(他の項目は、医師偏在解消の枠組み、東北の医療機関との連携、地域医療に支障を来さない教員採用、地域定着を促す修学資金制度、定員の適正化、その他文部科学省構想審査会の意見を踏まえた学部づくり、である)。
 運営協議会のメンバーは、東北各自治体の医療担当部局、各県医師会や大学医学部、医科大学、医療機関等の代表者約40名から構成され、委員長は里見東北大学総長、文科省など国側はオブザーバーとして協議会に参加している。
 現在までの各紙報道によると、同協議会は昨年10月・11月と2回開かれ、今年は1月16日、2月5日、2月20日と3回、合計5回開催されている。
 そして次回は3月2日に予定されているとのことであるが、そのうち2月20日の協議会の様子を伝える記事が冒頭の「四面楚歌」「生みの苦しみ」というものである。
 勿論、私には協議会における詳細な協議内容は不明であるが、各紙報道によると、協議会メンバーは薬科大の提案に殆ど反対しており、この様な状況では新医学部の設置、その内容の充実等を検討するためにされた協議会の機能を果たしていないのではないかと危惧されている。
 協議会では修学資金制度の内容が当初から問題とされ、又、ネットワーク病院(地域医療を現場で学ぶため新医学部と連携する病院)は宮城県を除き未決定であること、教員医師の採用は特定の大学から多数異動することにより地域医療に支障が出るのではないか等、未解決の問題が多数残っている。
 しかし、本年3月末とされる認可申請期日は迫っており、東日本大震災復興のため、その特例として30年ぶりに認められた医学部の新設である。
 「まさか」の「さか」が再び起きない様に、協議会の各メンバーの方々にはそれぞれの立場のみに固執することなく、被災者(消費者)・受診者の目線にも立った前向きな検討・協議をされるよう是非望みたい。

(弁護士 阿部 長)