杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

中尊寺再訪

 2月のある週末に出張で気仙沼へ行ってきました。地元の大手建設会社が民事再生手続の申立を行い、私は裁判所から監督委員に選任されたためです。債権者説明会が開催され、私も出席してきたのですが、市民会館のホールが満杯になり、地域経済に対する影響力の大きさを窺い知ることができました。前日にホテルに一泊し、魚市場近くのお店で美味しい海の幸と釜飯を頂くことができました。

 当日の説明会終了後、急行バスで一関に到着し、夕方の新幹線まで多少時間があったことから、思い切って平泉へ向かうことにしました。突然に雪の中尊寺が見たくなったのです。中尊寺へ行くのは中学校2年生の春の遠足以来ですから、何十年かぶりです。「五月雨の 降り残してや 光堂」、松尾芭蕉がこの地を訪れたのも青葉に囲まれた春だったようです。

 雪の中尊寺はそれはそれは感動的な美しさでした。観光客もまばらで、ゆっくりと月見坂を登ることができました。杉木立が雪の中に凛と立ち並び、金色堂の覆堂も更に雪でいっぱいに覆われていました。墨絵の中にでも入り込んだようなモノトーンの静かな風景です。そこは午前中に出席した債権者説明会の喧騒とはあまりにも対照的な世界でした。寒い空気を胸一杯に吸い込んで、金色堂に向かいました。

 平泉は近い将来に世界遺産に登録されるべく手続中だそうです。

 (弁護士 佐藤裕一)