杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

広島で考えたこと

 6月の下旬に県人事委員会の全国規模の研修会が開催され、広島市へ行って来ました。広島を訪れるのは初めてのことでした。空港バスで街へ入っていくと、幾つもの川が流れていて、橋が沢山架けられ、水に溢れた美しい街並みがひろがっていました。

 前回のこのコラムで阿部長先生が沖縄での平和への思いについて書かれていますが、広島といえば原爆のことを避けて通ることはできません。研修終了後に平和公園と原爆ドームを訪ねました。原爆ドームの存在感には本当に圧倒されました。大正4年に建造された建物だそうですが、反核、平和のシンボルとしてテレビや雑誌等で見ていたのとはまるでレベルの違う雰囲気でした。原爆で亡くなった方やご遺族はもちろんのこと、反核や平和を願う世界中の市民の祈りや願いがここに凝縮されているように感じました。

 平和記念公園ではこれまた有名な屋根がアーチ型になっている慰霊塔がありました。
 「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」この文章について、原爆の被害を受けたのに何故過ちなのかなどという議論が以前為されたことを思い出しました。慰霊碑はその前に立つと、アーチの中にちょうど平和の池と灯りが、そしてその背後に原爆ドームが見えるように作られているのです。ここでは誰もが自然に平和を希求して祈りを捧げています。被害者とか加害者といった垣根を越えて、二度と戦争という惨禍を惹起してはならないのだという思いを新たにして広島を後にしました。

 (弁護士 佐藤裕一)