杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

震災と復興-人口減に対応して

 悪夢のような東日本大震災から満2年が経過した。しかし、被災地の復興は未だしである。そこに追い打ちをかけるような報道が先日行われた。国立社会保障・人口問題研究会が発表した2040年までの将来人口の推計である。

 少子高齢化が叫ばれて久しいが、2010年の全国人口約1億2800万人を指数100とした場合、2040年には約1億700万人となって指数83.8まで下落するというものである。これは2010年10月の国勢調査を基に、人口の移動率などの仮定値を当てはめて、5年に1度公表されるものである。

 人口減少が全国的に従前予想より加速するということ自体ショックであるが、さらに深刻なのはその内容が東北にとって極めて厳しいものであることである。すなわち、全国47都道府県のうち人口減少率の最高は秋田県であり、2位が青森県で、3位の高知を除き、4位、5位が岩手、山形とワースト5のうち4県を東北勢が占めている。福島県も9位であり、全国平均を上回るのは宮城県のみで37位(逆に人口減少率の少ない順にすると11位)になる。全国的に人口が減少する中で市区町村別人口増加率3位に宮城県富谷町(24.4%増加)が入っていること等から、震災の影響が少なからず存すると思われる。

 2040年における65歳以上のいわゆる高齢者の人口割合も全国1位、2位が秋田、青森であり、岩手、山形、福島も10位以内である。75歳以上の後期高齢者の伸びは、関東、近畿など大都市圏やその近郊に多く、これは退職後も地元に戻らず、都市部に住み続けるからであろうが、後期高齢者の全人口に占める全国平均は2010年の11.1%から2040年には20.7%と上昇するとされているのに比し、秋田県は2040年は23%まで増加するとされ、これも全国1位である。こうした数字全てが震災に由来するものではないが、少なくとも今後の震災復興に極めて厳しいものになることは明らかである。

 一方、15歳から64歳までの生産年齢人口は2010年の約8000万人が2040年には約5700万人まで約3割も減少するとされているから、こうした労働力を補うための一つとして高齢者のさらなる活用が必須と思われる。社会保障の充実とともに、被災地の復興のためにも健康な高齢者の社会的活用を早急に且つ具体的に検討し実施されることを期待したい。

(弁護士 阿部 長)