杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

日弁連人権擁護大会に参加して

 今年10月初旬、千葉県の幕張メッセで開催された、日弁連主催の第58回「人権擁護大会」に参加してきました。
 この「人権擁護大会」は、日弁連が毎年1回、日弁連における人権擁護活動に関する活動報告や人権問題に関する日弁連としての宣言・決議の採択を行い、さらにはそれらのテーマに関連したシンポジウム等を合計2日間にわたって開催するというものです。東京以外の各地が持ち回りで開催するため、各地の弁護士が旅行も兼ねて集まり、旧交を温める場にもなっており、弁護士の間では、ある意味毎年の1大イベントとなっています。
 私は弁護士登録以来、恥ずかしながらこの人権擁護大会に一度も出席したことがありませんでした。今年は、私が仙台弁護士会で所属している高齢者・障害者の権利に関する委員会での活動にも関連する、認知症高齢者や知的障がい者の「意思決定支援」がテーマの一つとなっていたことから、初めて参加することにしました。
 シンポジウムでは、知的障がいのある当事者や支援者の方による講演、海外における意思決定支援に関する先進的な制度や国内での取り組みの報告、パネルディスカッションなどがなされました。我が国では多くの場合、家族や後見人等が「本人に代わって」意思決定をしてしまっているのが現状です。しかし、それらの障がいのある方々のうち少なくとも一部は、必要な支援さえあれば「自ら」意思決定をすることができるのであり、重要なのはそういった意思決定を支援するための仕組み・法制度を整備することだ、との問題意識が提起されていました。
 私自身、日々の業務において、こういった事案に後見人として関与したり、法律相談等において直面することがあります。その場合、確かにどうしても「こうしたほうが客観的に見て本人のためになるのではないか」という観点から判断しがちであり、本人による意思決定や「本人であればどう考えるであろうか」という本人の意思尊重といった観点での検討には必ずしも重点をおけていなかったのが実際のところです。意思決定支援の実践は簡単ではなさそうですが、普段からそのような問題意識を持ち当事者に関わっていくことの重要さを改めて学ばされました。
 これまで敬遠していた訳ではありませんが、実際に人権擁護大会に参加してみると、他の弁護士の活動や最先端の議論に触れ刺激を受け、司法修習当時の初心に立ち返ることもできました。報告書を読むだけでは伝わらない、参加すること自体に意義があるのだとも実感しました。弁護士の使命は、基本的人権の擁護と社会正義の実現とされています(弁護士法第1条)。正直なところ日々の業務に忙殺されていると、そこにまで頭が回らないこともままあります。しかし、弁護士となった以上、意識の片隅にであっても常に忘れず、微力ながらも自分が関わる分野で貢献ができれば、と意を新たにしました。
 ちなみに、人権擁護大会では1日目の夜に懇親会が開かれ、多くの弁護士は当地のお酒を楽しみに参加します。ただ、私は、せっかくなので千葉の海でサーフィンをしようと考え(大会をサボってではなく早朝に...です。念のため。)、わざわざ千葉に車で向かい、かつ早起きのために懇親会にも参加せず早々に寝ました。しかし、運の悪いことに、翌朝の海は、猛烈に発達した爆弾低気圧の影響で大荒れで、残念ながら千葉でのサーフィンは実現できず、すごすごと仙台に戻りました。次回人権擁護大会に参加する機会には、天候にも恵まれるよう期待したいと思います。
(弁護士 三橋要一郎)