ハルキストにとってのカズオ・イシグロ
2017年のノーベル文学賞はカズオ・イシグロに決まりました。長崎生まれの日本人でしたが、幼少期に一家でイギリスに転居し、成人してからイギリスに帰化した作家です。私の敬愛する村上春樹は今年も賞を取れませんでした。
カズオの名前を初めて知ったのは春樹の文章、「カズオ・イシグロのような同時代作家を持つこと」によってです。この文章は7年前にカズオの研究書の序文として書かれたものです。春樹にとってカズオは、新刊が出ると必ず書店に足を運んで、読みかけの本があったとしても途中でやめて、何はさておきページを開いて読み始める作家なのだそうです。
春樹のこの文章に接した後に、カズオの本を何冊か買って読んでみたのですが、残念ながらなかなか最後まで読み通すことができませんでした。その時は作家の文体と読者の相性のようなものだと思っていました。
今回のカズオの受賞の談話には「他の偉大な作家が受賞していないので少し罪悪感を覚える」とありました。すぐに春樹のことだと判ります。カズオの本をもう一度改めて読みなおしてみたいと思い、書庫から取り出してきました。
(弁護士 佐藤裕一)