杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

法曹倫理

 今年も7月になった。早いもので、もう今年も半分を過ぎたことになる。

 あと半年、これからどんなことが起こるだろうか。楽しみなことは9月になると、現在司法修習中の伊藤君が、晴れて弁護士として当事務所に入ることだ。併せて、当事務所も弁護士法人化を予定し、現在、佐藤裕一先生を中心として諸々のスタッフが法人化の準備をしてくれている。法人化しても弁護士業務そのものは基本的に変わることはないが、近時、弁護士に対する社会のニーズはかなり変化しており、我々もこれに適確に対処していかなければならない。

 それにしても最近、新聞・テレビで大きく報道されている朝鮮総連中央本部に絡む緒方重威氏の問題は一体どうしたことであろうか。安倍内閣になってから北朝鮮に対する対応が一段と厳しくなり、朝鮮総連関連団体に対する課税が強化されているといわれる。今までが甘すぎたともいわれるが、当初の強制執行回避目的の仮装売買ではないかとの容疑に対し、緒方氏は、在日朝鮮人を守るために総連側の要望に応じたものと弁解していた。これについては緒方氏の元公安調査庁長官という立場から不審感を覚えつつも、総連側代理人土屋公献弁護士とは司法修習12期という同期の間柄ということもあり、相互信頼から、あり得るかもしれないなとも思っていた。

 しかし、6月28日の逮捕容疑は詐欺罪ということである。これでは朝鮮総連は被害者であり、今までの緒方氏の弁解とは全く逆の構図である。緒方氏は逮捕容疑を否認しているということであり、北朝鮮も日本政府の朝鮮総連の弾圧を非難している。

 この種の事件には複雑な裏事情が存することが多いので、本件のこれからの進展に注目したい。しかし検事長まで勤め上げた人物が逮捕されるということは、法曹に対する信頼を失わせたことは事実である。

 昭和40年に私が弁護士登録した頃、仙台弁護士会の控室に大きな囲炉裏があり、そこで先輩弁護士からいろんな話を聞くのが常であった。この時の話に「不動産事件については、弁護士は当事者とならないようにしろ」というのがあった。改めてその言葉の重みを噛みしめている。

  (弁護士 阿部 長)