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杜(MORI)の 四季だより

杜の都、仙台に事務所を構える弁護士法人杜協同の弁護士たちが綴るリレーエッセイ

野良猫

弁護士 阿部  長

 先日(5月14日)の新聞に「加藤もと名人に禁止命令」という見出しで、東京三鷹市の集合住宅に住んでいる将棋の加藤一二三もと名人が野良猫に餌をやり、糞尿などで迷惑しているとして、付近住民らの起こした訴訟の判決が13日に東京地裁立川支部であり、加藤九段に餌やりの禁止と慰謝料など約200万円の支払を命じたことが報じられていた。私が興味を引かれたのは、裁判長の市川正巳さんは以前仙台地裁に勤務されていたことがあって、存じあげていたことと、我が家でも一頻り野良猫騒動があったからである。

 私が子供の頃、我が家では犬と猫を何匹か飼っていた。犬は主として我々男の子の遊び相手であり、猫は祖母と妹が可愛がっていて、田舎のことでもあり、家庭内でも周囲の家との間でも特に問題となるようなことは何もなかった。

 戦後、仙台に住むようになって犬を飼っていたところ、隣に引っ越してきた人も犬を飼っていて、その犬同士が毎日ものすごい喧嘩をするので、とうとう犬を飼うのを双方で止めてしまったことがあった。それから犬にも猫にも縁のない生活を送っていたところ、7、8年前に一匹の白と黒の可愛い野良猫が庭に迷い込み、つい餌をやったところ、時々我が家にやってくるようになった。そこまではよかったのだが、ある晩ニャーニャーと庭で鳴き声がするので出てみると、何といつの間にか大人になった野良猫が数匹の子猫を連れて我が家の庭に住み着いていたのである。そうなると糞尿のにおいがひどくなり、庭木にも被害が出るようになったので、一転して猫との平和的共存から断固猫排除の方策をとることになった。

 しかし一旦住み着いた猫を完全排除することは容易ではなく、猫の出入りしそうな場所を金網や板で防ぐやら、木に金網を巻き付けて猫が登れないようにしたり、猫の嫌うという薬をまいたり、いろいろなことを実行し、結局目的達成までに3年程要したのである。

 加藤さんが餌をやっていた猫は10数匹もいたということで、異臭の外に駐車場の車が傷つけられたこともあったというから、例え動物愛護のためであったにしても、その損害は受認限度を超えているとした判決は相当であろう。それにしても動物を飼う時はもちろん、一時的に餌をやる時でも単に可愛いからとか可哀相だからということでは済まないのだということを考えさせられたことであった。

 (弁護士 阿部  長)

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